心的疾患の場合、薬物療法が重要な治療法となります。双極性障害の場合、この薬物療法は特に重要な治療法であり、半永久的に付き合っていかなければならない治療なのです。

薬物療法で使われる薬の種類は数多くあり、患者さん個人の体質や症状などに合わせ、様々な組み合わせを行います。ここでは、双極性障害の薬物療法に用いられるデパケンという薬について、紹介していきます。

双極性障害の治療薬?症状別の3つの効能!

双極性障害の治療薬には、その症状により大きく3つの種類に分けられます。ひとつは「躁状態を抑える薬」、そして「うつ状態を持ち上げる薬」と「再発を予防する薬」の3種類です。薬物療法は、この3種類の薬を状態に合わせて処方していく事になります。

主剤となるのは2種類?その用途を解説!

双極性障害の治療薬で主剤となる薬は、気分安定薬(気分安定剤)と抗精神病薬(抗精神病剤)の2種類になります。この2種類の中にも、いくつかの種類があり、それぞれ、効きめの速さ(即効性の有無)や緩和する必要がある症状によって使い分けるのです。

そもそも、双極性障害の薬の場合、「現段階で問題となっている症状に対する処方」と、「将来予測出来うる症状(気分の波)に対する予防としての処方」が薬物療法の柱となります。

気分安定剤の種類とは

気分安定薬とは、気分の波を抑える作用がある薬を指します。イライラを静め、上下動の波を緩やかにする効用があります。この気分安定薬は、脳の中枢神経に作用します。気分の波を抑えるという観点からも、この薬は主に【躁状態】の時に処方する薬です。

一般名としては、炭酸リチウム系、バルプロ酸系、ラモトリギン、カルバマセピンの4タイプがありますが、それぞれ副作用として発生する症状(眠気、皮膚の炎症など)に違いがありますので、一概にどれが一番良いかという事は言えないのが実情です。当然のことながら、処方に関しては、医師と相談の上、副作用の影響を踏まえて薬を選ぶという事になります。

抗精神病薬の種類とは

抗精神病薬は、従来は統合失調症に対する薬として使用されてきました。主成分であるドーパミンは、脳の働きをブロックする効果があり、双極性障害でも、統合失調症に似た症状の患者さんに対して処方するようになったのです。

具体的な効用としては、幻覚や幻聴、妄想など目に見えないものに対する思い込みを抑制する働きがあり、現実と非現実の境界を明確に認識するための薬です。種類としては、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、リスペリドン、ゾテピンの5タイプがあり、これらが抗精神病薬の一般名となります。

デパケンの効果と特徴!適応する症状とは?

ここで紹介するデパケンは、気分安定薬のひとつです。一般名をバルプロ酸ナトリウムと言い、元々は「てんかん」の症状に対する薬として開発された薬で、双極性障害にも効果がある事が分かりました。デパケンには、デパケン錠とデパケンR錠があります。

デパケンR錠は、最初に開発されたデパケン錠よりも湿度に強く、効果の持続性が向上されました。つまり、一日に処方する回数が減らせるということで、患者さんに対する負担の軽減にも繋がっています。現在の薬物療法では、このデパケンR錠が主流となっています。

デパケンのメリット

デパケンのメリットは、躁状態に対する効果がある、再発防止効果が期待できる、比較的安全性が高いなどが挙げられます。双極性障害では、躁状態とうつ状態での波の大きさは、おおむね比例します。

つまり、躁状態の波が大きければ大きいほど、うつ状態の時の波も大きくなるのです。躁状態の時の波をデパケンで抑制する事が出来れば、うつ状態の時の波も、それに比例するという事なのです。

デパケンのデメリット

反対に、デパケンのデメリットは、うつ状態の時の効果が期待出来ない(効果が弱い)という事です。また、長時間の効果は期待できるが即効性が無いこと、肝機能に影響を及ぼす危険性がある、眠気が出る、催奇形性がある、ラミクタールとの併用には注意が必要などが挙げられます。

もちろん、個人によって効きめもデメリットの症状も様々ですが、デパケンを服用している患者さんに対しては、定期的に血液検査を実施し血中濃度を測定し、肝機能の状態も確認する必要があります。

デパケンの適応症状は

デパケンを適用する患者さんの症状としては、躁状態の症状、てんかんの症状、片頭痛の症状に適応するのが一般的です。また、デパケンには、再発予防の効果が確認されている事から、補助的に双極性障害全般に使用される事もあるのです。

また、双極性障害てんかんの症状以外にも、双極性障害の症状に類似する統合失調症やパーソナリティ障害の症状などにも使用されているケースがあります。

妊婦さんには危険な薬

先ほど、デパケンのデメリットで紹介したとおり、デパケンには「催奇性」があります。催奇形性とは、妊娠中の女性(妊婦)が薬を飲み続けた事により胎児に奇形を及ぼす事を指します。妊婦さんがデパケンを服用する事により、胎児の神経管欠損や顔面奇形などが発生する危険性があるのです。

デパケンが効かない!そんな時の治療薬は?

デパケンには即効性がありません。ゆっくりと効果が表れる薬ですから、人によっては、最初のうちは効果が表れているか分からないという方も居る事でしょう。また、先ほど紹介したとおり、妊娠中の女性には処方できない薬ですし、デパケンでの副作用によって処方を続けるのが困難になる方も居ます。

この場合、デパケンと並んで気分安定薬として使用されている薬があります。それは、リーマスという薬です。双極性障害に対する治療薬として古くから用いられている気分安定薬で、極度の躁状態に効果があります。また、自殺念慮など、自殺に対しての予防効果も確認されています。

ただし、副作用として、喉の渇きや手足が震えるといった症状が現れる人も居ます。リーマスはデパケンと双璧を成す気分安定薬ですが、人によっては色々な副作用も出る可能性があるという事を念頭に置いておきましょう。

デパケンは第二の選択肢

医師によっても考え方に違いはありますが、デパケンは双極性障害の治療薬としては、二番目の選択肢として考えられます。薬を選ぶ際は、患者さんの症状や状態を十分に考慮した上での判断になりますが、最初にリーマスを処方し、経過観察をしながら状況によって薬の量を加減したり、デパケンに切り替えたりする場合もあるのです。

自分に合う薬は?医師との密接な連絡が鍵!

自分に合う薬に出会うまでは、時間がかかる場合もあります。症状の違い、耐性の有無、その時の体調にも左右されます。薬の種類や量は、人によって全く違います。その観点から考えると、心的疾患の薬物療法とは完全なるオーダーメイド治療とも言えます。ここで大切なのは、医師とのコミュニケーションです。

副作用で苦しまない為に

薬には、時として副作用が伴います。その時々で状況に合わせた服用が大事なのです。また、気分安定薬でも、Aという薬を単体で服用しているだけで効果が現れる人も居れば、AとBを併用する事で効果が表れてくる人も居ます。

副作用で苦しまない為には、きちんと決められた用量・用法を守って飲み続けること。勝手に薬の処方を止めないこと。そして、副作用の兆候や、症状に変化が現れた時は、速やかに医師に伝えること。これが、薬物療法で最も重要な事なのです。

この様に、医師との密接なコミュニケーションから、患者さん一人一人に合った薬が生まれるのです。

まとめ

ここで、双極性障害とデパケンの関係についてまとめます。

    <知っておきたい5つのワード>

  • 治療薬には3つの効用がある
  • 主剤となるのは2種類である
  • 元々は、てんかんの薬であった
  • リーマスという選択肢
  • 医師との密接な連絡が重要

ここまで、デパケンの特徴を中心に、双璧であるリーマスについても触れてきました。紹介してきたとおり、どちらも気分安定薬ですが、特徴として大きな違いというのは、躁状態の時のエピソード(気分の波の回数)の違いです。

簡単に言うと、単純な躁状態(エピソードが少ない。もしくは単体)であれば、リーマスが効果的であり、複雑な躁状態(エピソードが多い。もしくは複雑)であれば、デパケンの方が効果的なのです。

双極性障害の場合、この薬とは長い期間、付き合っていく事になります。場合によっては寛解時にも服用するケースもありますので、半ば半恒久的とも言えます。そう考えた場合、先ほどの紹介したとおり、自分に合った薬というのが大切なのです。患者さん一人一人に合った薬は必ずあります。その薬に早く出会うためにも、しっかり治療と向き合いましょう。

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