双極性障害の特効薬としてリチウムが発見されたのは1949年のことであり、諸外国では、数十年前から双極性障害の治療について議論され、調査・研究が行われてきました。

ところが、日本で双極性障害が議論されるようになったのは21世紀に入ってからのことで、治療ガイドラインが初めてつくられたのは2011年のことです。そうしたことから、日本の実態を示すデータは乏しいのが現状です。

治療の基本は薬物療法

双極性障害の各状態と、それに有効な薬は以下のとおりです。

  • 躁…気分安定薬、抗精神病薬
  • うつ…気分安定薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬
  • 不眠…睡眠薬、一部の抗精神病薬
  • 予防…気分安定薬、一部の抗精神病薬

躁とうつと予防に有効な気分安定薬

薬の名称(商品名)

リチウム(商品名:リーマスなど)、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)

どんな使い方をするか

気分の波を安定化させる薬で、双極性障害の躁状態、うつ状態、症状のない期間にかかわらず継続して使用します。ただし、妊娠の可能性がある場合や、授乳中の服用については、主治医や家族と相談して方針を決める必要があります。

リチウムの特徴

リチウムは、使用する量に気をつけなければいけない薬です。血中濃度が高まると中毒症状が現れ、少ないと効き目がなくなります。そのため、使用中はときどき血液検査をして濃度を調べます。
血中濃度が高くなると、下痢、嘔吐、ふらつきなどの中毒症状が現れます。

服薬を始めた当初の1週間ほどは、しばしば、手のふるえ、のどの渇き、下痢、吐き気などが現れますが、だんだん気にならなくなります。ただし、手のふるえは、服薬している限り続く場合もあります。のどが渇くときは、水分を十分に取ることが大切です。

それぞれの薬がもつ作用と副作用

バルプロ酸は、リチウムとともに広く使われている薬ですが、副作用として、まれに肝臓に障害が起こることがあるため、これも血液検査をしながら使用します。

ラモトリギンは、躁状態・うつ状態を予防する効果があり、特にうつ状態を予防する効果が高いのが特徴です。副作用には、頭痛、眠気、めまい、吐き気、発疹などがあります。まれに重篤な皮膚障害が現れることがあるので、薬をのみ始めて2か月以内に皮膚に発疹や発赤が出たときは、すぐに主治医に相談してください。

カルバマゼピンは、躁・うつの予防と、躁状態に効果がありますが、副作用として、発疹、臓器の機能障害、白血球の減少などがあります。リチウムやバルプロ酸だけでコントロールできない場合などに、血液検査をして副作用のチェックをしながら使用します。

躁、うつ、不眠、予防に有効な抗精神病薬

薬の名称(商品名)

オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)

どのような特徴があるか
躁状態のいらいらをしずめ、気持ちを穏やかにする作用がありますが、太りやすいという副作用があります。また、糖尿病の人は使用不可で、糖尿病になりやすい体質の人も、発症のきっかけになる場合があるので注意を要します。
まれに、手足がこわばる、舌がもつれる、じっとしていられないという副作用が出ることもありますが、これらの症状は薬で抑えられます。

うつに有効な抗うつ薬

薬の名称(商品名)

SSRI(セロトニン選択的取り込み阻害薬)…フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬)…ミルナシプラン(トレドミン)、デュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサー)

どんな使い方をするか

双極性障害の治療では、うつ状態のときも、抗うつ薬を単独では使用しないのが原則となっています。抗うつ薬だけを服用し続けると、躁状態になったり、躁とうつを繰り返したりするためです。特に、三環系抗うつ薬と呼ばれる抗うつ薬は、気分安定薬との併用であっても避けるべきとされています。

どのような特徴があるか

抗うつ薬が効いてくるまでには1~2週間かかります。薬によって吐き気が出るものもありますが、次第に治まっていきます。気になる場合は、吐き気止めを処方してもらうとよいでしょう。まれに、落ち着きがない、攻撃的、疑い深いなどの副作用や、パロキセチンのように、急にやめると離脱症状が出ることがあるので、医師の指示通りに服薬することが大切です。

注意したい点

24歳以下の人が抗うつ薬を使う場合は、使用のメリットとデメリットについて、主治医から充分な説明を受けたうえで検討する必要があります。

うつ状態で抗うつ薬を用いた治療をしているときに躁状態になった場合は、すぐに主治医に連絡します。

不眠に有効な睡眠薬

薬の名称(商品名)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬など

どのように用いる薬か

寝つきが悪い、朝早く目が覚めるなどの症状に合わせて、さまざまな睡眠薬が使われます。
しばらく服用した睡眠薬を急にやめると眠れなくなることがあるため、薬をやめるときも医師の指示にしたがいます

薬物療法以外の治療

電気けいれん療法(ECT)

薬物治療のほかに、頭に通電する電気けいれん療法という治療法があります。
この治療は、抗うつ薬よりも有効性が高く、即効性もあるため、自殺の危険が高いときや妄想が強いときなどに用いられます。

併用すると効果が高まる精神療法

双極性障害の治療には薬物療法が不可欠ですが、精神療法を併用することで、病気への理解を深め、治療効果をさらに高めることが可能になります。

心理療法(医師による心理教育)

ある種の精神療法ともいえる心理療法では、病気の性質や、薬の作用と副作用を理解し、どのようなことが起きたら再発のサインなのかを自分で把握することをめざします。再発を放置すると、さらに悪化させることになります。それを避けるため、再発したときに最初に出る症状(初期兆候)を確認し、本人と家族で共有しておくことを目指します。

対人関係・社会リズム療法(IPSRT)

米国で開発されたこの精神療法は、薬物療法と併用しながら、生活のリズムを整え、ストレスとの付き合い方を身につけることで効果が上がることが検証されていますが、日本でこの治療を受けられる施設は少ないのが現状です。

自分を守るためにできること

再発の予防で最も大切なのは、きちんと薬をのみ続けることです。薬の副作用がつらい場合は、副作用を最小限にする方法を医師に相談しましょう。

規則正しい生活習慣は、双極性障害からの回復を助けます。徹夜を避け、朝は決まった時間に起きて一定のスケジュールで生活することを目指しましょう。

経済的な問題は福祉制度を活用

双極性障害を発症したことで生活の安定が損なわれた場合は、障害年金という公的年金が受けられます。これを受給するには、細かく定められた条件を満たす必要があります。

病院や地域の保健所、精神保健福祉センターには、そのような福祉制度に詳しい専門スタッフとして精神保健福祉士やソーシャルワーカーなどがいます。

双極性障害と診断され、経済的な問題に直面したときは、ひとりで悩まずに、こうした専門スタッフに相談することをお勧めします。

生活習慣を守って自分の人生を守る

規則正しい生活を心がけて服薬していても、それでも再発することはありえます。そうなったときのために、自分で再発の兆候を把握しておき、異変を感じたらすぐに受診して、再発の波を最小限にとどめることが大切です。

双極性障害の辛さから解放されたいあなたへ

「鬱」と「躁」の悪循環から独力で脱出する「プチ認知療法」

認知療法で双極性障害を克服した人は多くいます。なぜなら、認知療法で自分の考え方を変えることで鬱と躁をコントロールすることが可能だからです。ですが、認知療法を実践するのは簡単ではありません。そこで、認知療法の専門家が作成したDVDを見るだけで実践が出来るプチ認知療法があります。それを実践すると、認知療法を気軽に実践することが出来、結果として、うつを克服することが出来ます。